Z世代の社内コミュニケーションは「報・連・相」ではなくなってきた
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私たちの世代は「報告」「連絡」「相談」が社内コミュニケーションの基本と教えられてきました。ところが、Z世代の社員たちは、どうも「報告」「連絡」「相談」が下手だ。遅い。そういう声をよく耳にします。
それはZ世代のコミュニケーションが「自己完結型」だからです。上司への「報告」「連絡」「相談」よりも、もっと広域な情報網を使ったコミュニケーションを得意としています。
もしかすると、促さなければ彼らの「報告」はタスクやプロジェクトの完了時まで出てこないかもしれません。
ですから「報・連・相」が上がってくるのをただ待つのではなく、上司サイドのコミュニケーション能力やコーチング力を上げることに注力する企業も増えています。
しかしここではまず、Z世代が饒舌になるコミュニケーションから考えてみましょう。従来型「報・連・相」から新しい社内コミュニケーションへ。
今回はその方法をご紹介いたします。
- Z世代が「報・連・相」を不得意とする2つの理由
- 従来型の「報・連・相」のデメリット
- Z世代が饒舌になるコミュニケーション
- デジタルツールを利用したコミュニケーション
Z世代が「報・連・相」を不得意とする2つの理由
まず前提として知っておいていただきたいのは「Z世代は「報・連・相」を不得意としている」ということです。その理由は2つあります。
1つは「上司や先輩に頼るという意識が薄いこと」にあります。
Z世代は物心がついた時からデジタルツールが身近にあった世代。そのため、わからないことがあれば自分で調べて解決しようとします。
学生時代ですら、先生に質問するよりもYoutubeやインターネットで調べていた、という世代です。
さらに言えば「お仕着せ」の情報ツールよりも、自分たちが使いやすい情報ツールをどんどん開拓していく能力もあります。
たとえば、何かを調べるとき、検索エンジンを使わずにInstagramやtwitterで調べるというのを聞いて驚かれたことはないでしょうか。
このように、知識、ノウハウ、そして経験値すら、Z世代は自らの力で得ようとしてしまいます。
上の世代は「それでは本当に理解できていない」「会社のやり方はそうじゃない」と考えるかもしれません。
しかし、Z世代にとって「理解するかどうか」は、さほど大きな問題ではなく、効率よく回答を導き出すことの方が大切なのです。
ましてや「会社オリジナル」の回答にそれほど興味がありません。
この傾向は、新人研修でも顕著に現れます。
学生時代の傾向がそうであったように「教師」や「講師」に対して求めることは「自分の情報網にないこと」であり、「新しい体験」や「新しい価値観」です。
「教科書を読めばわかること」「インターネットを調べればわかること」などは、研修メニューの中で評価の低いものとなります。
そして、課題を出せば皆一様にすばらしい成果物を出してきますが、そこにはインターネットなどで独自に調べ上げた、研修では学んでいないこともふんだんに盛り込まれ、いったい、研修の効果があったのかどうかすら、測定することができなくなります。
2つ目の理由は「自己開示を嫌う世代」であることです。
ネット上の個人情報保護に敏感であるばかりでなく、リアルな人間関係でも自分の情報を開示することにとても慎重な世代です。
さらに、学生時代から「キャラ」を演じることに慣れていることから、知らず知らずのうちに自分を「明るい性格」や「配慮のできる人間」という理想的な新入社員像に当てはめている人もいます。友人にすら本当の自分を開示しないという人も多い世代です。
自己開示をしてほしいからといって、無理にシャッターをこじ開ければよいということでは当然ありません。いうまでもなく、まずは信頼関係を構築することが大切です。
ここまでで「Z世代は『報・連・相』を不得意としている」とご理解いただいたかと思います。
では、それを訓練して得意になってもらうのか。それとも不得意ならやめてしまうのかを考えなければなりません。
今回は、そのどちらかではなく、両方を取り入れることで解決します。
従来型の「報・連・相」のデメリット
そもそも「報・連・相」とは、上司が部下の仕事の進捗を把握し、手助けをするためにあるはずのものです。
しかし信頼関係が構築されていない上司への「報・連・相」は、上司が部下の仕事を監視し、評価し、あるいは叱咤される恐れのあるもの、という印象のほうが強くなります。これは、Z世代に限ったことではありません。
また、たとえば電話やフォーマットに入力して報告。またはそれを印刷して提出というような「報・連・相」は、Z世代が最も苦手とする方法です。
苦手意識から滞る。さらに、苦手意識から定型文のみになる。
これでは「報・連・相」の意味がありません。「報・連・相」はタイムリーで、正確な情報があってこそ有益なコミュニケーションツールになるのです。
従来型の「報・連・相」では、Z世代にとっては負担であるばかりで、「なんでこんなことをしないといけないのか」という不満を募らせる原因になります。
また、これでは双方にとって、形骸化した意味のないやり取りになりかねず、受け取る上司にとっても正確な情報を得ることができない可能性があります。
Z世代が饒舌になるコミュニケーション
Z世代にとって「報・連・相」が負担だとしても、会社では自己完結だけで仕事が進められるわけではありません。
ではどのような形のコミュニケーションが有効なのでしょうか。Z世代が饒舌になるコミュニケーションには2つの条件があります。
1つ目は、抽象的な内容を求めないこと。
従来型の「報・連・相」を振り返ってみて下さい。抽象的な内容がたくさん詰め込まれていることが多々ありませんか?
具体的な数値や5W1Hに沿った形での「報・連・相」を求めましょう。
ある程度「報・連・相」それぞれに、記入すべき項目のテンプレートを決めておくとよいでしょう。
2つ目は、シンプルであること。
記入や入力に時間がかかるものではなく、簡易なテンプレートやボックス、選択方式でスピーディーに提出できる形にします。
1つの「報・連・相」に時間や労力をかけずに、スピーディーでシンプルなものをたくさんやり取りするのです。こうすることで、かえって密なコミュニケーションをとることができます。
密なコミュニケーションが信頼関係を築き、さらに円滑なコミュニケーションを生みます。
これが社内で取り組むべき新しいコミュニケーションの条件です。具体的、かつシンプル。それは、本来の「報・連・相」の目的でもあるはずです。
デジタルツールを利用したコミュニケーション
シンプルでスピーディーなコミュニケーションには、デジタルツールの利用が有効です。サイボウズやデスクネッツなどのグループウェアは、社内やチーム内のコミュニケーションのみならず、報告書やプロジェクト管理にも便利です。
報告や相談ならchatworkやLINE WORKSなどのチャットツールで遅滞なく行う方が良いでしょう。
音声電話やメールに馴染みのない世代には、その世代に合ったツールでコミュニケーションを図るというのも一案ではないでしょうか。
もちろん、デジタルツールの活用は、Z世代の社員のみならず、社内全体のコミュニケーションの向上、業務の効率化、また、個人で抱えているタスクの共有、見える化など、たくさんのメリットがあります。
今回の記事が社内コミュニケーションについて見直すきっかけとなれば幸いです。
この記事を書いた人
中川真寿美
サービスマーケティングを軸とした、チームビルディング、評価制度の構築、運用を得意とする。 ストレスやコミュニケーションをテーマにした講演、リーダーシップ研修のほか、ウェルビーイングを実現したい企業からの依頼も多い。 ■講演、研修実績■日本政策金融公庫、大阪府(研修講師)、商工会、商工会議所、民間企業研修、摂南大学経営学部非常勤講師 ■メディア■名古屋CBCテレビ、bizoceanジャーナル 仕事依頼はこちら nakagawa.masumi@gmil.com