人事領域におけるエンゲージメントが指す意味とは


SNSをはじめ、様々な場所で「エンゲージメント=engagement」という言葉が使われるようになりました。

「よく耳にするな」「馴染みある」という人もいれば「何となく意味は分かるけど、説明しろと言われると難しい」なんて人もいるでしょう。

エンゲージメントは「誓約」「約束」「婚約」「契約」という意味を持つ用語です。

使う場面に応じて意味合いは異なりますが、どれも深いつながりや関係性をあらわしています。

ただそれだけではありません。

例えば、冒頭に挙げたSNSの分野では「いいね」や「RT」、「コメント」などユーザーからのアクションのことを指します。

SNSの分野と同様に人事領域でも少し異なる意味を持っています。

今回はビジネスや人事領域におけるエンゲージメントの意味や高めるメリット、またエンゲージメントに似た言葉についてお話しします。

ぜひ最後まで読み、皆さんの業務にお役立てくださいね。

人事領域でのエンゲージメントの意味とは

人事の分野においてエンゲージメントとは、従業員の企業に対する「愛着心」「愛社精神」という風に解釈されます。

またこれらのような企業に対する思い入れのことを「従業員エンゲージメント」と呼ぶこともあります。

愛社精神という言葉は、自分が勤める企業を誇りに思っている素晴らしい状態だと思います。

しかしながら、近年では終身雇用が崩壊したなどと言われるようになり「勤めている会社への愛着を持ちにくい」「愛着を持っていても継続しにくいのでは」と個人的に感じています。

自社への愛着が薄い場合、条件が良い他社への転職にハードルを感じない人もいるでしょう。

人材の流失は少子高齢化による人材不足が深刻化する中では、企業にとって死活問題になることが予想されます。

今後も企業が存続するためにも、従業員と絆を深め、共に必要な存在であるという感覚を持つことが必要です。

そういう意味でも、エンゲージメントという言葉は注目され、世間では高めていこうという流れができています。

エンゲージメントを高める4つのメリットとは


多くの企業が注目しているエンゲージメント。

このエンゲージメントを高めることで大きく4つのメリットがあります。

順番に見ていきましょう。

メリット1:コミュニケーションが増えて社内の雰囲気が良くなる

エンゲージメントを高めることで得られるメリットの1つ目は、コミュニケーションの活発化です。

エンゲージメントが高い企業の特徴の1つに、従業員が現状をより良くしようという意欲が強いことが挙げられます。

意欲が強いと自然と発言も活発になります。

「事務作業の手間を軽減できる方法はないだろうか」

「若手を育成するためにどういう働きかけができるだろうか」

このように意見が出れば、それに対するアドバイスも自然と出てくるでしょう。

その繰り返しで自然と従業員間、企業と従業員間のコミュニケーションが多くなっていくことがメリットとして考えられます。

メリット2:モチベーションが上がり、生産性アップ!

2つ目の得られるメリットは従業員のモチベーションの向上です。

従業員の「仕事を頑張ろう」という気持ちは、業務を行う中でとても大切なものです。

例えば仕事が作業となった人とやる気に満ち溢れ「今日も目標をしっかり達成するぞ」と思っている人。

この2人が始業時間から定時まで働いたとしましょう。

同じような仕事のスピードだったり、生産性だったりするでしょうか?

アポイント数や売り上げといった目に見える成果が出る職種ではないとしても、周りに与える影響は大きく違うことでしょう。

メリット3:情報共有が密になり、業務のブラックボックス化を防止できる

エンゲージメントを高めるメリットの3つ目は組織内での情報共有が細やかになることです。

仕事の基本として挙げられる「報連相」。

報連相を面倒に思ったり、義務だけで行う人もいるでしょう。

中には「上司に話しかけにくいな」と思っている人もいるかもしれません。

しかしエンゲージメントが高い状態の人の場合、企業や自身の成果に対して集中しているため、適切なアドバイスを周囲から受けるためにしっかりと報連相をしている場合が多いようです。

結果として行っている業務についても抱え込むことが減り、ブラックボックス化を防ぐことにもつながります。

メリット4:愛着を持たれる会社になれば、離職率が低下する

4つ目のエンゲージメントが高いメリットは離職率が下がることです。

エンゲージメントが高い従業員は、愛着のある会社で仕事をすることにやりがいや喜びを感じていることが多いようです。

企業と従業員の間に絆があることにより、転職したいと考えることも減るでしょう。

今は人材不足が深刻となっているので、エンゲージメントを高め優秀な人材の流出を防ぐことは企業にとって重要事項と言えます。

エンゲージメントを高める方法について

従業員のエンゲージメントを高める方法として以下のものがあります。

〇企業の方向性やトップの思いを共有する

〇従業員にとって働きやすい環境づくり

〇従業員の成長を支援する

〇人事評価制度の整備

実際にどのように自社で取り入れるかを想像しながら読んでみてくださいね。

企業の方向性やトップの思いを共有する

毎日、淡々と仕事をするだけなら企業が大事にしていることや思いを知る必要はないかもしれません。

ただ、その企業で人生をかけて仕事をしたいと思うなら、これから自分が勤める企業がどこに向かおうとしているのか、コミットメントは何なのかを知る必要があります。

これらを知らないまま企業に愛着を持つことは不可能に近いことだからです。

ミッションやビジョン、コミットメントを定期的に従業員に伝えること、また正しく伝わっているかを確認してみましょう。

伝えられた内容に共感すれば、従業員のエンゲージメントは自然と高まるでしょう。

従業員にとって働きやすい環境づくり

従業員がイキイキと働ける職場環境の整備が、エンゲージメントを高めることにつながります。

職場環境は心身の健康とも密接な関係があります。

働きやすい環境であれば、ストレスを感じることなく落ち着いて仕事に打ち込めるでしょう。

逆に働きにくい環境だと従業員のエンゲージメントは下がっていくかもしれません。

従業員の成長を支援する

資格取得などを目指す従業員に対して、費用を支給することもエンゲージメントアップにつながります。

支援を受けた従業員は「応援してもらっている」「会社に支えてもらっている」という思いを感謝とともに持つでしょう。

支援に対する感謝が所属意識となり、企業を共に成長する仲間という感情が芽生えるきっかけになることが期待できます。

人事評価制度の整備と透明化

人事評価への不満は、企業や共に働く上司への不信感やいら立ちにつながります。

そのために人事評価制度をしっかりと整備すること、そして可能な限りどういう基準で評価されているのかを透明化することも大切です。

自分の頑張りが正当に評価されると、自然とやりがいも生まれます。

従業員が納得できる人事評価制度を整えることは、エンゲージメントを高めるのにとても重要です。

エンゲージメントに似た言葉2つをご紹介

最後に、エンゲージメントに似た意味を持つワードについてお話しします。

まず1つ目はロイヤリティ(Loyalty)です。

ロイヤリティとは従業員の企業に対する忠実度を指す言葉です。

また働く企業に対する従業員の心理動向としてもよく用いられています。

2つ目は従業員満足度です。

従業員満足度とは、従業員が職務内容や待遇、報酬に対してどれだけ満足しているかを表す指標です。

「エンゲージメント」「ロイヤリティ」「従業員満足度」

これら3つの言葉の大きな違いは「結びつきの方向性」です。

企業と従業員の立ち位置の違いとも言い換えられるかもしれません。

例えば、エンゲージメントの考え方では、企業と従業員は対等な立場です。

助け合いながらともに成長していくという考え方なので、どちらか一方だけではなく相互の結びつきを強める働きかけが大切になってきます。

次にロイヤリティの考えでは、企業と従業員の立場は対等ではなく、上下関係が存在します。

企業の方が強い立場で、従業員が企業に対し忠誠を誓うという関係性です。

従業員満足度は、処遇や環境に対する評価のため、企業側の取り組みに応じて満足度が変わります。

まとめ


優秀な人材に長く自社で活躍してもらうためには、エンゲージメントを高めていくことは不可欠です。

特に人材不足が叫ばれている昨今、企業にとって取り組むべき課題の1つと言えるでしょう。

「この会社で働くことが面白い」

「会社とともに成長し続ける人生にしたい」

そう従業員に感じさせることができる企業こそが、今後も生き残り続けるのではないでしょうか。

今回の記事が自社のエンゲージメントについて考える機会となれば、とても嬉しく思います。


SHARE ON

この記事を書いた人

青木真子

青木真子